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英国の住宅の変遷と100年コミュニティー
モデル・カンパニー・タウン、
ガーデン・シティ、
サステイナブル・コミュニティーを訪ねる

 

 集住形態が主流のヨーロッパにおける住宅にあって、アングロサクソン民族である英国では、古くから戸建て住宅が嗜好されてきた歴史があります。

 1853年に端を発した理想郷(モデル・カンパニー・タウン) の開発事例から、

1875年にベッド・フォード・パークの開発に始まるガーデン・サバーブ、アフォーダブルでかつサステイナブル・シティとしても評価され1903年より開発されたガーデン・シティ、レッチワースなどは、今でもなお高い人気を誇り、居住者の満足度も非常に高くなっています。

 また英国政府は2016年までにすべての新築住宅をゼロ・カーボン化(ZEH)、2019年までにはすべての非住宅建築物をゼロ・カーボン化することを決定しました。

 英国における100年に及ぶ住宅地の変遷をご視察いただき、これからの日本の計画住宅地のあり方のヒントとされてはいかがでしょうか?

 

<視察地概要>

ポ−ト・サンライト=今も高い人気を誇る石鹸会社による理想郷 

1888年、ウィリアム・リーバーによってリバプール郊外に

開発され、現在でも美しい街並みと高い資産価値を

持ち続けているモデル・カンパニー・タウンの代表的事例。

石鹸工場で働く人々のために、リーバー兄弟社の

収益の一部や私財から、住宅の維持・管理、学校、美術館、

教会、研究施設などが建設された。 

リーバーは、「前と後ろに庭を持つ戸建て独立住宅を建て、

裏街の貧民街では学び得ない人生の真理を学び、

単に仕事に往復するだけで土曜日の給料のみを楽しみに

しているより、もっとも大きな喜びが人生にはあることを

知るだろう」と演説し、喝采を浴びた。

ザ・ブロウ(ランコーン)=ボンエルフとバス専用道路、歩車分離のパイオニア

リバプール郊外に1969年より開発されたザ・ブロウは、

住宅地における車両運行の制限を設けたプロジェクト。

戦後第3世代ニュー・タウン開発の最初に計画された

事例で、街全体を囲むように8の字にバス路線を配し、

バス停を約800mおきに設置することで住民の足の便を

確保。

その後専門家による様々な分析で、この街における

住宅および道路の配置が、極めて安全性が高いことが

立証された。 

奥行きのあるクルドサック、広々としたコモン・グリーン、

ボンエルフをはじめて取り入れたことでも有名。

ボーンヴィル=レッチワースへも影響を与えた

         チョコレート会社の理想郷   

1878年、バーミンガムの郊外ボーンヴィルの地に、 

英国王室御用達のチョコレート会社である

キャドバリー社によって開発されたモデル・カンパニー・

タウン。

テラスハウスを中心とした優れたデザインの住居、

英国最大級の鐘塔をもつ中学校、 小学校、教会、

集会場など工場で働く従業員のための

さまざまな施設を建設し、

後に開発されるレッチワース等のガーデン・シティへも

大きな影響を与えたといわれる。

レッチワース

=100年を超えたハワードのサスティナブルなガーデン・シティ

ロンドンの北、約60キロに位置するレッチワースは、

英国産業革命後の大不況期の1903年に

E.ハワード、R.アンウィン、 

B.パーカー達による田園都市構想のもと生まれた。 

ハワードは、「都市はその規模において

限定された大きさのものでなければならない」、

「ガーデン・シティはその周囲を田園的な

緑の農村的地帯によって囲まれていなければ

ならない」、「ガーデン・シティは、それ自体が 

工業を主とする雇用力を持つ自己完結的 

ないしは自足的なものでなければならない」 

とした。

環境と自立を重視したハワードの田園都市の

コンセプトを初めて具体化したプロジェクト。

ウェルウィン・ガーデン・シティ=第2のガーデン・シティ 

レッチワースに続く英国第2のガーデン・シティ。

人口約5万人、17,000ヘクタールと

レッチワースよりひとまわり大きな規模の 

ウェルウィンは、最後のガーデン・シティ

でもある。

レッチワースと比較し、ショッピング・センター

などの商業施設、工業地域、デザインそして経済性は、

ウェルウィンの方が優れているとの意見もある。

ハムステッド・ガーデン・サバーブ=クルドサックをはじめて導入した住宅地開発

1906年ダーメ・ヘンリエッタ・バーネット

により開発され、R.アンウィンとB.パーカーも

優れた計画を作り出した。

クルドサックをはじめて取り入れた住宅地として有名で、

現在においても英国における住宅計画に重要な影響を

及ぼしている。

現在約16,000人の居住人口をもつ

中・上級階級のための住宅地と言え 

ロンドンの中心部からもわずか西南に約5キロと

非常に便利な立地。

ベッドフォード・パーク

=最も初期のガーデン・サバーブであり

鉄道沿線型の住宅地開発事例  

ロンドンの西、ヒースロー空港へ向う途中の

ベッドフォードに1875年(明治8年)より 

開発された英国で最初の鉄道沿線型郊外住宅地。

ロンドン中心部から列車で約30分の

ターンハム・グリーン駅を中心に開発され

1914年に第4期の開発終了と共に完成した。  

「アン女王様式」と呼ばれる英国の

都市部における住宅の伝統である赤レンガ造りで

建設され、リチャード・ノーマン・ショウが 

多くの設計を手掛けたことも有名。

大都市に近接して開発された居住専用の

ベッドタウンという位置づけは、  

常盤台、成城学園などに通じるものがある。

ベッドゼット=英国で注目された複合型エコ住宅

ロンドン南部サットン区のハックブリッジに

2001年6月に完成した英国最大の 

複合型エコ住宅団地。

住居はメゾネット、タウンハウスを中心に

82軒240人が住み、

就業者も200人を数える。 

環境との調和をテーマに活動する建築家、

ビル・ダンスター氏によるこのプロジェクトは、

2000年度“ザ・ハウジング・デザイン・

アワード”に選出されるなど、

さまざまな賞を受けた。

パウンドベリー=英国皇太子によるアーバン・ビレッジ

ロンドンから南西に約200キロ、

ドーチェスターの西端に位置する 

パウンドベリーは、英国のアーバン・ビレッジ構想を

代表するプロジェクト。

英国皇太子所有の土地にレオン・クリエの

パウンドベリー、第1街区のまちなみ2.jpg

マスター・プランにより1993年より着工され、  

第4期の完成まで25年のスパンで計画されており、

決して便利な立地ではないものの、

米国のCNUのTND(伝統的近隣住区開発)の

リストにも登録されるほど

海外の評価も高い。 

サスティナビリティー、ヒューマン・スケール、

ダイバーシティ、アフォーダビリティー、 

英国人にノスタルジーを感じさせる

高い品質のデザイン、 

良好なマネージメントなどが特徴。

BREイノベーション・パーク

BRE(英国建築研究所)イノベーション・パークは、

ロンドン中心部から北へ約32kmの地に立地し、

BREの提供(有償)する敷地に、ハウスメーカー、

設計事務所などがZEH(2016年までに

すべての新築住宅をゼロ・カーボン化する政策)、

ZEB(2019年までにすべての非住宅

建築物をゼロ・カーボン化する政策)に

対応するサスティナブル住宅を展示している施設。

現在9棟が完成し、CSH(Code for Sustainable

Homes、2006年12月に地域・地方政府庁により

設定された省エネ性能に関する6段階の評価軸)

評価最高のレベル6の住宅などが展示 

示されており、英国内はもとより世界各地からの

視察者が訪れる。

 

 

<日程イメージ>

第1日、

 航空便にてマンチェスター着、リバプールへ(約60キロ)

                (リバプール泊)

第2日、

 午前:ザ・ブロウ視察

 午後:ポートサンライト視察  (リバプール泊)

第3日、

 午前:バーミンガムへ移動(約185キロ)、

 午後:ボーンヴィル視察   (バーミンガム泊)

第4日、

 午前:レッチワースへ移動(約170キロ)、

 午後:レッチワース・ガーデン・シティ視察 

               (レッチワース泊)

第5日、

 午前:ウェルウィン・ガーデン・シティ視察

 午後:ハムステッド・ガーデン・サバーブ視察 

                 (ロンドン泊)

第6日、

 午前:ベッド・ゼット視察

 午後:ベッドフォード・パーク視察 (ロンドン泊)

第7日、

 終日:パウンドベリー視察     (ロンドン泊)

第8日、

 午前:BREイノベーション・パーク視察(ロンドン泊)

 午後:ロンドン市内視察

第9日、 

 ロンドン発帰国の途へ

 

<時系列で見る英国の住宅地>

  13世紀〜  古きよき時代の美しい街並み

          ⇒ コッツウォルズ地方 

  1875年〜 ガーデン・サバーブ(田園郊外)

          ⇒ ベッドフォード・パーク 

  1888年〜 モデル・カンパニー・タウン 

          (資本家による理想郷) 

          ⇒ ボーンビル 

  1900年〜 同上  ⇒ ポート・サンライト

  1903年〜 ガーデン・シティ(田園都市)

          ⇒ レッチワース

  1906年〜 ガーデン・サバーブ 

          ⇒ ハムステッド

  1919年〜 ガーデン・シティ  

          ⇒ ウェルウィン

  1967年〜 ニュー・タウン 

          ⇒ ザ・ブロウ(ランコ−ン)

  1993年〜 アーバン・ビレッジ 

          ⇒ パウンドベリー

  1999年〜 アーバン・ビレッジ 

          ⇒ ザ・ミレニアム・ビレッジ

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